ヒューマノイドロボットを開発するFigure社は2026年6月30日、BMWグループとの提携の新たな段階として、最新世代ロボット「Figure 03」を米国サウスカロライナ州のBMWスパータンバーグ工場に導入した。2025年に前世代モデルFigure 02が3万台の自動車組み立てに貢献した実績に続き、Figure 03は単純な金属板のピックアンドプレースから、不定形な部品を認識し適切な順序で供給する「シーケンシング」へと、ロボットが担う作業の複雑性を引き上げた。
前世代から進化した「物流工程の頭脳」
Figure 02が達成したのは、主に決められた金属板を掴んで運ぶという反復作業だった。これに対しFigure 03が挑むシーケンシング作業は、同一部品を規則的に供給するのではなく、位置や向きがバラバラな状態の部品群から、組み立て順序に応じて正しい部品を選び取り、指定のスロットに設置する必要がある。この作業には、刻々と変わる視覚情報を基にその場で判断し、腕と手の動きを動的に修正する能力が求められる。従来の固定式6軸ロボットアームでは、その都度の位置ずれや遮蔽に適応できず、構造的に自動化が極めて困難だった領域だ。
「Helix 02」が実現する全身使いの同時操作
今回の実演で中核を担うのは、Figure社が独自開発した視覚-言語-行動モデル「Helix 02」である。この「ピクセルからアクションへ」直接変換するモデルは、高頻度の視覚運動制御を提供し、Figure 03の手足と胴体の動きをリアルタイムで協調させる。その結果、ロボットは両手で不安定な薄肉部品を精密につかみながら、足を踏み出し体幹の重心を移動させ、台車を引くために腕全体で力を込めるという、複数の異なる動作を一連の流れの中で切り替えられる。精密さと全身を使った力強い操作を一つのワークフローに統合した点が、従来の産業用ロボットとの本質的な違いである。
ヒト型ロボットが製造現場で示す構造的利点
Figure 03の導入は、単なる実証実験を超えて、自動車製造の物流工程における構造的課題への解答を示している。従来の固定式自動化設備は、環境が完全に制御された空間でなければ機能しない。しかし実際の工場では、部品を積んだカートやビンの位置は毎回わずかに異なり、部品そのものも完璧な整列状態で到着しない。このような動的なマテリアルハンドリングを自動化するには、移動し、姿勢を変え、変化を認識して対応できるロボットの身体性が必要となる。Figure 03とHelix 02の組み合わせは、専用設備の設計や長大なプログラム変更なしに、汎用的な物理AIが人の作業空間に入り込めることを示した。
FigureとBMWが描く汎用物理AIの次なる標的
Figure社はこの成果を、数世代にわたって製造物流を停滞させてきた認知的・身体的なボトルネックを、汎用物理AIが克服した瞬間と位置づけている。2025年のFigure 02による実績は、現場の信頼獲得とデータ蓄積の第一段階であり、Figure 03によるシーケンシングは、より高い付加価値を持つ工程への展開可能性を具体的に示した。BMW Group Plant Spartanburgという量産拠点の一角での継続的な開発と実地検証は、ヒューマノイドロボットの経済合理性が、研究開発から設備投資の意思決定の段階に移行しつつあることを物語っている。